- 2010-06-08 (火) 23:06
- 書評
- キズナのマーケティング ソーシャルメディアが切り拓くマーケティング新時代 (アスキー新書)
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- 発売元: アスキー・メディアワークス
- 価格: ¥ 840
- 発売日: 2010/04/09
- 売上ランキング: 2709
「ソーシャルメディアは魔法の杖ではない」。この言葉がソーシャルメディアマーケティングを手掛ける会社の社長によって書かれた本に載っている。これだけで救われるマーケティング担当者はずいぶん多いのではないか。よくわかってない上司から「コストをかけず短期間で」ソーシャルメディアでなんかしましょう、というヨタ話をひっかけられている現場の人間にとって、こうした本は銀の弾丸となる。この本の77ページ目にある冒頭の句をコピーして突きつければ良い。それで話はいったん終わる。
ソーシャルメディアマーケティングの役割
本書はまず既存のメディアとソーシャルメディアをマッピングし、その役割の違いを語る。よくあるソーシャルメディアに関する誤解は以下の2つだ。
- 認知度の向上ができる!
- ユーザーの情報をコントロールできる!
いずれも間違い。認知度の向上は依然としてマスメディアに広告を打った方が早いし、ユーザーの情報のコントロールは広告枠を買うか、さもなくば自分でメディアを立ち上げるかした方が早い。
池田氏はソーシャルメディアマーケティングに期待できる役割を2つに絞っている。
バズ・バイラル型
短期的な口コミの拡散を狙う。ただし先のとおり認知度を上げたいだけならばマスメディアに勝ち目はない。あくまで企業が仕掛けた何らかのキャンペーンが拡散するのを狙う。事例として挙げられているソニーのハンディカム「Cam with me」も、共感を呼びやすいようにうまく作られたキャンペーンが、「泣ける!」という触れ込みでバイラルしたものだった。今後はクロスメディアや既存のキャンペーンの最大効率化を狙った形になっていくだろうと池田氏は予測している。
アドボカシー型
中長期的な「キズナ」の構築を目指す。企業と消費者の間に、信用・理解・ロイヤリティ・関与・共感といった関係性を構築していく。消費者との何らかの「対話」を通じてこうしたキズナを作っていく。かなり手間はかかるし効果がすぐに見えるものではないが、こうした努力でしか成しえない結果がどこかであらわれてくるものでもある。
ソーシャルメディアマーケティングの効果測定
以上2つの役割を果たすには、さまざまな手段があるが、いずれにしても「やりたいからやってみる」「やったらやりっぱなし」では意味がない。何らかの効果測定の手段が必要になる。池田氏は「費用対効果」と「投資対効果」という言葉を使い、1回あたりの施策に対し明確な効果を見ていく必要がある「費用対効果」の施策に対し、「投資対効果」はそれまで積み上げた施策の回数によって、効果がストックされていくものだと説明している。コーポレートCMやソーシャルメディアマーケティングは後者の「投資対効果」を計測すべきだという。そのため、ソーシャルメディアマーケティングにおける詳細な効果測定はなかなか難しいとしている。
それでも池田氏は効果測定のための「指標づくり」を試みている。KPIという言葉にならって「KCI=Key Communication Indicator」という言葉を提案している。どれだけ顧客と会話が図れたか、どういった評価がそれによって得られたのか、そうした結果について共通の指標を作ったうえで、記録していく。ツールも今のところバラバラと存在している状態なので、かなり手間はかかりそうだ。あくまで顧客との関係性構築を目指すのが良いとはいえ、何らかの数値的なアリバイが要るという現場のジレンマを受けた、なかなか苦しい個所ではあったと思う。
「友達になってください」とは申し込まない
顧客とのキズナ。エンゲージメント。マーケッターならずとも耳にすることが増えた言葉。しかしこれらの言葉は、単に財やサービスを生産し販売する「売り手」と、それらを購入する「買い手」という関係性の構築がすでに飽和状態にあるという状況から出てきた言葉なのだと思う。売り手と買い手の間に、もうリンクは十分な数作られた。そしてその数はもうそうそう増えない。とすればあとはリンクの中身を良くすることで、まずリンクを減らさないようにする必要がある。
しかしキズナやエンゲージメントといった言葉は、関係性を表す言葉であり、つまり何かのコミュニケーションの「結果」でしかない。「友達になってください」という申し込みから始まる友情がそうそう無いように、関係性の構築を目的に始まったキズナづくりが上手くいくとも思えない。広報やサポート、そういった部分での結果として、キズナやエンゲージメントといったものが可視化されるのだろう。そしてそれらは今ソーシャルメディアによって発見された概念ではない。「スマイルゼロ円」ではないけれど、飲食店のように数の飽和した領域では、製品以外での付加価値創出のために(徹底した労働感情の訓練の下)、こうした関係性の構築が図られてきた。ただウェブをメインに行動を起こすことで、こうした関係性が可視化しやすくなったのは確かだと思う。いずれにせよ、キズナづくりのためのキズナづくりは、空回りに終わるのだろう。
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